目次
進撃の巨人

進撃の巨人 進撃の巨人
 
Vol.01 リヴァイ&モブリット・バーナー
 
空から落ちる雨粒が、ひとときの会話を紡ぐ。今日もどこかの空の下、《雨》が繋いだ、小さな絆の物語。

 鈍色の空から降りしきる大粒の水滴が、街の石畳を叩いていた。
「うわっとと……どうしよう」
 紙袋をいくつも抱え、店屋の軒下へ駆け込んできた男に、先客が不機嫌な声をかける。
「……通り雨だ」
「リヴァイ兵長!」
 と、男は敬礼しようとして、抱えていた荷物を取り落としそうになる。
「そのままでいい。お前……ハンジの副官だったな」
「はっ、第四分隊副長、モブリット・バーナーです」
「ヤツの使いか」
「ええ、書物や薬品の買い出し、それに分隊長の身の回りのものを……兵長は」
「エルヴィンの呼び出しだ。兵舎ではできない話だとな」
「……馬車をお使いには?」
「呼び止めるときに泥が跳ねる」
「ああ」
平時のリヴァイは、極端なまでの潔癖症だったと、モブリットは思い出す。

「(ハンジさんとは正反対だ。けど……ふたりはお互いに信頼しあっている)」
 長年の付き合いが生む、特別な絆。それは、自分と上官の間にはないものだ。
 彼の羨望にも似た複雑な思いを感じてか、リヴァイは外の雨雲を見上げながら、ひとりごとのように言った。
「大変だろう。ヤツの副官は」
「と、いうと?」
「夢中になると、てめえの命もそっちのけだ」
「……そうしたときにお守りするのが、自分の仕事だと思っていますので」
「ああ。お前にしか出来ない仕事だ」
「え……?」
 意味をはかりかねたモブリットに、リヴァイは目も上げずに言った。
「いくら昔なじみでも、べったり一緒にいるわけじゃねぇ。ずっとハンジの側にいるのはお前だ、モブリット」
 ぽつり、ぽつりと、雨はその勢いをなくし、空では雲が流れてゆく。
「自信を持ってやれ。たまに嫌気もさすだろうがな」
「(そうか……『これからもハンジさんを頼む』って、言っているんだ)」

 雨粒はいつしか姿を消して、雲間から差し込む陽光が、ふたりの居る軒下を照らしていた。
「止んだ。貸せ」
「あっ、兵長、重たいですよ!?」
 モブリットの抱えていた紙袋の一つを掴み、リヴァイは軒の外へ踏み出して、振り向きもせずにモブリットを促す。
「どうせ同じ兵舎に帰るんだ。ハンジにひとつ貸しを作ってやるのも悪くない」
「……分隊長が兵長の存在に気づけば良いんですが」
 ケツを蹴飛ばして気づかせてやる、と、リヴァイは言った。その背中が照れくさそうな微笑に見えて、モブリットの顔には自然と、笑みが浮かんでいた。
(了)

 
Vol.02 ジャン&ベルトルト

※本サイト内の画像及び文章の無断転載・無断利用を禁じます

TOPへ