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進撃の巨人

Vol.21 リヴァイ
2015.04.16 Updated.
「あの……リヴァイ兵長、昼間はどこに出かけていたんですか?」
 旧調査兵団本部、古城を整備したその建造物。夕食の席で、エレンは自分の監視についているリヴァイ班の前で、昼間見たものの話をしていた。
「……覗き見か、エレン?」
「い、いえ! 自分は命令されていた窓拭きをしていて、偶然出掛ける兵長を見たので」
「そうか」
 不機嫌そうになった上官の声色にびくりと肩を震わせ、エレンは首を振る。その様子に、先輩のエルドが落ち着いて声をかけた。
「今日の兵長は、次の壁外調査作戦のパトロンのところに、挨拶に行っていたんだ」
「本来は団長の仕事なんだけど、そこのお家の子供さんが、ぜひリヴァイ兵長に会いたいって、憧れてたらしくて」
 ペトラのフォローに、エレンは納得して頷く。自分も同じ境遇なら、ぜひ人類最強のリヴァイに会いたいと思うだろう。
「……首尾よくいきましたか? ただでさえ気を遣う席で、子供の相手なんて、大変だったでしょう」
 グンタが上官をねぎらうと、リヴァイは大きくため息をつきながらも、なんとかな、と頷き、その様子を語りはじめた。
 調査兵団の支援者は、商業で財をなしたタイプの金持ちが多い。あわよくば調査の結果で得られそうな資産……鉱物や土地を独占し、商売に使おうという打算からだ。
 エルヴィンがあらかじめ『寡黙な英雄』というイメージを伝えていたおかげで、リヴァイは形式的な挨拶で、なんとかその場をしのいでいた。
 支援の約束をとりつけたその後、身なりがよく、利発そうな少女が声をかけてきた。
『……ああ。リヴァイなら、俺だ』

『すごい! 私、調査兵に憧れてるの! パパには内緒だけど、十二歳になったら兵士に志願するわ! ねえ、巨人ってどのくらい大きいの? しゃべる? 人間を食べるって、どこから食べるの?』
 内地で暮らし、伝聞でしか巨人のことを知らない無垢な少女の質問攻めに、リヴァイは辟易しつつも、淡々と答える。
『大きさは……色々だ。そこに飾ってある槍くらいの3メートル級から、この家の高さくらいの15メートル級。吠えるヤツもいるが……意味はわからん。人間を食うときも、巨人による……握りつぶしてから食ったり、半分だけかじって捨てたりな』
 早く離れてほしいと、わざと残酷な表現を使っても、少女の興味は尽きることがないようだった。
『ねえ、ちゃんと訓練をしたら、私も調査兵になれる? 私も、外の世界を見たい!』
 少女の澄んだ瞳に、リヴァイはふと目を伏せた。
『……お前は、親父やお袋が好きか?』
『えっ? うん、大好きだよ』
『いきなり会えなくなったら、どう思う?』
『え……』

 調査兵とは、そうした覚悟が必要なものなのだ、と、リヴァイは彼なりに言葉を選びながら伝えた。
『だから……お前はお前が大事なもののための道を選べ』
 そう伝えると、少女はしばらく考えて、顔を上げて言い切った。
『……じゃあ私、パパよりお金持ちの商人になるね! それで、調査兵団の活動にいっぱいお金を出してあげる!』
「……凄いですよ、兵長! てっきり子供の相手でお疲れだと思ったら、未来のパトロンを確保したとは」
 冗談めかして笑うエルドたちに、リヴァイはため息混じりに紅茶を啜る。
「事実を伝えたまでだ……笑うな」
 口では牽制しつつも、何事もなく任務を終えられたことに、リヴァイ自身も満足していた。あのまま商家の子女に調査兵団になりたい、などとゴネられていたら、こちらの責任になりかねないのだから。
「……ガキってのは、本当に真っ直ぐなもんだな」
 目の端に意外そうな表情を浮かべているエレンを捉え、彼は目を閉じてカップを置いた。
(了)

Vol.20 ミカサ・アッカーマン
 

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